運命の恋21

章三、お前、何しに来たんだバツが悪くてつい、ギイは悪態を吐く。

馬鹿なお前を諌めに来たんだよ。どうせ、毎日呑んでいる薬の効きが悪くなって増やして呑んだんだろう。いい加減に薬に頼るのは止めろ

章三はそう言うと盛大な溜め息を吐いた。

それと、届け物だ。お前がぶっ倒れて携帯の電源が切れているのか繋がらないと困っていた野沢に代わってワザワザ日本から貴重な休みを削って来たんだよ

充電が切れたと言う言葉にギイは手元の携帯を見つめた。

真っ暗な画面のそれはギイが倒れている間に充電切れを起こしていたようだ。

そのギイの目の前に書斎机の上に置いてある筈のタブレットが差し出された。

開いて見ろ

章三に言われるまま立ち上げると幾つかあるメールの中に章三からの物を見つけて、添付ファイルを開く。

そこには懐かしく愛しい人が笑って写っていた。

託生

思いも寄らない場面が目に映り、ギイは一瞬、息を飲む。

高三の九月の託生だ。文化祭が近づいて、昨年は俺の所為で大変だったと愚痴っていた時

正確な日付まで覚えているようなギイの記憶力に章三は絶句するしかなかった。

これでは写真を必要としない訳だ。

しかし、そんな昔を懐かしむ為に章三はわざわざここまで来た訳じゃない。

ギイ、俺はこれを見て思い出したよ。

葉山がどんな奴だったか。

あいつは思いも寄らない根性の持ち主だよ。

一年生の一年間を学校中の生徒からハブられても弱音なんか吐いたりしていなかった。

寧ろ自分から喧嘩を売ってたような奴だった

章三が何を言い出したのか分からないようでギイは眉間に皺を寄せた。

章三、俺がそんな事忘れてるなんて思うなよ

ああ、お前は忘れない。

でも忘れてるよ。

葉山は根性のある奴だ。

だから、絶対諦めない。

葉山はお前を諦めない。

だから、葉山もお前を探した筈だ。

お前に会いたいと何か痕跡を残している筈だ。

ギイ、葉山がお前に会おうとしたらどうやってコンタクトを取ると思う?

章三の言葉にギイは益眉間の皺を深くした。

託生にはここの電話番号を教えていた。

でも、なんの連絡もして来ていない

ギイ、お前、祠堂を辞めた後の二年間は監禁状態だったって言っていたな。

誰にも、家族にさえ連絡禁止だったと言っていたよな。

葉山がその時にお前に連絡して来てもやはり何処かで止められただろう

ギイはあっ、と小さく呟いた。

あの頃の通話記録がある筈だ

あたし、探してくる!

それ迄黙ってふたりの様子を見ていた絵利子がそう言うと階下へと走って行った。

その後ろ姿をみて、章三がいきなりあーっと声を上げる。

ギイ、あの子、妹さんか?やべっ、挨拶し忘れた

ギイが監禁状態で一切の連絡を遮断されていた頃にNYのマンションに掛かって来た電話の記録は大量のノートに書かれて残っていた。

電話を受け取った日時、掛けてきた相手の名前と電話番号。誰への電話だったのか。

そして、要件。

全て執事が記録して管理してあった。

その中からギイに掛かって来たものだけを探した。

そして、見つけた。

ヤマタクミ三月二十日日本十一時半

ハナマタミー八月二十九日日本九時二十三分

受け取った者が日本語を聞き取れなかったのだろう。

それでも、託生からと思われるものは全部で十数件程あった。

ただ、連絡禁止だった為にギイに掛かって来た物には電話番号を聞かなかったのだろう、何処の国からの電話だったかとだけ記載されていた。

そして、託生からと思われる電話はある時からドイツから掛けられていた。

タクミハヤマ一月二日ドイツ十六時十分

葉山の奴、ドイツにいたんだ

章三が驚いたように言う。

その時、ギイは同じドイツから掛かって来ていた記録をみていた。

リツオガタ三月八日ドイツ十時七分

ギイの拘束が解かれるほんの三カ月前に掛かってきていた電話。

緒方律。

託生の行方を捜していなければ、誰だろうと訝しむ筈だった名前。

こんなところで出会えるとは思わなかった。

章三、託生を見つけたよ

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